目次
1.優しかった・好きだった夫が…モラハラは治るもの?治らないもの?
「付き合っていた当時は、夫の少し強引なところも、自分を引っ張っていってくれそうと頼もしく感じてたんです。ちょっと優柔不断な私には、いい彼だな、なんて。
でもいつの間にか、あれもこれもお金のことも私の意見を聞かず一切夫が決めてしまうようになって……渡される生活費を増やしてほしいけど、話をしようとすると『ダメ妻だよね』とそのたびなじられるので、悲しすぎて言えません。」
「『俺が守るから』の言葉がうれしかったんです。あの時は。でも今は『俺が稼いでるんだから』に変わってしまいました。
でも本当にそうですから。だから夫が機嫌よく過ごせるようにいつも気遣って頑張らないと。夫のことはそうは言っても好きなんです。でも『稼げないくせに』『こんなこともちゃんとできないの』とことあるごとに言われると辛いです。」
結婚して夫婦になったら2人の関係性は変わるもの……それが当たり前と思って、ご自分の辛い状況に耐え続けている方はいませんか?
上記のようなことを言われたりされたりしていたとしたら、それはモラハラです。
でも、今日明日離婚にスパッと踏み切れる人、もう離婚しかないと実際の行動にうつしている人ばかりではないでしょう。
「実際にカウンセリングや相談に訪れる人でも、そうはいっても、経済的なことを考えたり、子どものことを考えたり、迷っている人がほとんどです。
どこかでやはり相手のことが好きな気持ちがある、でも苦しくて辛い。この状況をなんとかしたい、という気持ちなんですね。
中には、改善したいという相談者のお気持ち以上に、心身ともに危険が及んでいる状況なことがわかり、改善する以外の方法をとることをおすすめする場合ももちろんあります。
そこの判断も含めて、行動は早ければ早いほどいいですね」(当サイト監修者:石原さん*)
できることなら、モラハラを改善して、
あの頃のように幸せを感じる夫婦関係に戻りたい……
この記事ではそう感じている方の参考(と希望)になる情報と解説をお届けします。
*この記事の監修:石原沙知さん(セクシュアルパートナーシップセラピスト)
1-1.外面がいいのに……は、改善の余地あり!
実は、モラハラをする夫には2つのタイプがあります。
A:家庭内だけ、あるいは妻にだけモラハラの「内弁慶」タイプ
B:家庭だけでなく、職場をはじめ、どこでもモラハラ行動をする「暴君」タイプ
ところであらためて「モラハラ」とは
モラハラ(モラルハラスメント)
言葉や態度で相手の人格などを攻撃し、個人の尊厳を否定する精神的な暴力のこと。 |
こういう行動は、実は誰もが多かれ少なかれ子どもの時はやってしまって、親や周りの大人から「それはやってはいけないよ」と注意されませんでしたか?あるいは「自分がされて嫌なことはしないようにしよう」と教えられてきたのではないでしょうか。
通常は、大人になるうちに「自制心」が育って相手にそういう行為をしなくなっていくのですね。
ただ、この「自制心」は厳密ではなくて、人によっては、個人や相手によって変わることもあります。つまり、「この人だったら許してもらえるだろう」「この場合は大丈夫」と相手を判断している場合があるのです。
Aの「内弁慶」タイプのモラハラ夫は、言ってしまえば、
・モラハラ対象の人に対して
→自制心を持たずに、ワガママに振る舞っても許されるよね。
自分が何をしても関係は壊れないはず。(甘え)
・モラハラ対象じゃない人
→失礼なことはしてはだめだよね。
関係を保つためにここはぐっと我慢すべき。
と自制心をコントロールしていることになります。
モラハラを受けている側にとってみれば、いやらしい、ずる賢いタイプですが、Aの「内弁慶」タイプのモラハラ夫は裏を返せば(妻に甘えているだけで)「自制心はある」ということですよね!
もしその自制心が、妻や家族にも働くようになれば、改善の可能性や希望があるとも言えそうです。
1-2.家でも外でもモラハラ……は危険信号
それに対して、Bの家庭だけでなく、職場をはじめ、どこでもモラハラ行動をする「暴君」タイプは、非常に難しいでしょう。
なぜなら、どこに行ってもその行動が許されてしまうので、改善の余地がないからです。
このタイプは、経営者など社会的に成功していると言われる人にも多いのですが、必ずしもそうではないケースもあります。
その場合、社会的に孤立してしまって生活できなくなってしまうこともありえます。そうなると余計に家庭でのモラハラ行為がエスカレートする危険性も高いのです。
一度、専門機関に相談するなど、自分の身を守ることをおすすめします。
2.モラハラ夫になってしまう原因
当然ですが、モラハラ夫も、生まれながらにしてそういう行動をする人ではなかったはずです。
どうしてそうなってしまっているのか?……改善するためのヒントがそこにありそうです。
2-1.消化できてない? 幼少期の体験
モラハラをしやすい人は、自己愛傾向が強いと言われています。つまり、「自分を認めてほしい、認められるべき」「自分は人よりも優れているから大事にされて当然」という思いが強いのです。
そういう考え方になってしまう背景として大きいのが、幼少期の環境です。
多くの要因がありますが一つは、子どものころに親から褒められずに育った場合です。褒めてほしい、認めてほしいという欲求を抱えたまま大人になり、自己愛が強くなることがあります。
また、反対に子どもの頃に過度に甘やかされて育った場合もあります。この場合は、自分の非を認めることを覚えずに大人になり、自分の考えはいつも正しい、自分は何でもできるという歪んだ信念に囚われてしまうことがあります。
また、親がモラハラをしていた家庭に育った場合は、気づかないうちにその考え方や行動が刷り込まれてしまっている場合があります。
いずれもそういう自分自身やその歪みに、本人が気づくきっかけが必要になります。
2-2.無視できない! 仕事ストレス
自分に余裕がないと、他の人に優しくできないのは誰しも同じですね。その心の余裕、心のキャパシティも個人差があります。
モラハラに走る夫の場合、その心のキャパシティが小さい場合が多いのです。
多くは対人関係が不器用だったりしてストレスが溜まりやすく、自分のネガティブな感情との折り合いがつけられず、我慢できず爆発してしまいがちです。
なので職場でストレスが溜まる、仕事がきついということなどが続くと、そのフラストレーションを妻にぶつける、つまりモラハラの形で解消しようとする傾向が強まります。
モラハラを受ける側は恐ろしさを感じるかもしれませんが、それはモラハラ夫本人の心の器の小ささ、キャパシティなさからの反応なのです。
2-3.歪んでいる……モラハラ夫の欲しい「承認」
ではなぜ、モラハラ夫は、家で不機嫌になって黙り込んだり、怒りを原因でない人(妻)にぶつけたり、自分の正しさを強引に押し付けてきたりするのでしょうか。
普通の大人どうし、他人どうしであれば、そんなことは起こりませんね。
ただ、考えてみれば親とその子どもの関係であればよくあることです。
幼い子どもは、お母さんは「僕のいうことを聞いてくれる」「僕の気持ちをわかってくれる」「いつも僕に優しくしてくれるし、褒めてくれる」と期待しています。
しかし、お母さんがいつも自分の期待に応えてくれるわけではありません。そういう時は、泣き叫んだり、駄々をこねたり、道の真ん中でひっくり返ったりと、お母さんを困らせます。
その場面でなんでもかんでも期待に答えてしまう、ダメなものはダメと教えられず、つまり甘やかしてしまうと、子どもの駄々がエスカレートしていくことはよくご存知でしょう。
モラハラ夫の行動はその幼い子どもと同じと言えます。つまり、妻への「甘え」です。
何でも、どんな言い方をしても自分のいうことを聞いてくれることが自分を認めてくれている証。自分が不機嫌でいても、気を遣ってくれるのは自分のことが大事だから。そして自分の妻なのだから、そうしてくれるのが当然……。
自分が何より一番と考えているモラハラ夫にとって、妻がモラハラに付き合ってくれているのは自分への愛情であり、自分を認めてくれてる証なのだと勘違いしているのです。
3.モラハラ夫の心理から考える、「モラハラ対策」の本当とウソ
では、このようなモラハラ夫の心理からみて、一般的に言われている「モラハラ夫への対処の方法」は効果的なのでしょうか。
3-1.「モラハラを自覚させる」
モラハラ夫は、自分がモラハラをしていることを自覚していない場合もあります。また、うすうす感じていたとしても認めたくはない、というケースも多いです。
ただ、なぜモラハラをするのかというと、モラハラ夫本人にとって、それは自分の心の不安定さをなんとかしたい、あるいは認められたいという欲求を満たすためにしていることです。
「あなたのやっていることはモラハラよ」と言うことは「自分を否定された」に等しい打撃を与えることになると言っていいでしょう。
それに対して「そうなのか」と認めることができる人はごく少数でしょう。多くは、その事実に向き合うことができず、スルーするか、拒否反応を示すか、あるいは行動がエスカレートするかになります。
もう、離別を決めているのなら、その状況になっても、弁護士なり第3者に入ってもらうことで全く問題はないかもしれません。言いたいことを言って、自分もスッキリできるでしょう。
ただ、今後も夫との関係を改善したいのなら話は別です。モラハラをしているという自覚を持ってもらうことが第1歩とは言え、「あなたがモラハラしている」という宣告は、とてもリスクが高いことだと考えてください。
そうではなく「私がが辛い、悲しい思いをしている」という状況を繰り返し相手に伝える、理解してもらう行動をするほうが、効果的です。
3-2.「関係者に暴露する」
「うちの夫はモラハラをしている」と親戚や周りに暴露すると、周りからの圧力で本人も自覚して反省するのではないか、そういう意見もあります。
ただ、これも夫との関係を根本的に改善する上では逆効果になることが多いです。
いじめっ子は親や先生に言いつけて、その場はあやまる大人しくする行動をしたとしても、後から仕返しをしたり、さらにバレないように裏でいじめてきますよね。
モラハラ夫にとっては、自分のプライドを傷つけられた、面子を潰されたことでしかなく、自分を振り返る前に、あなたへの怒りが増幅してしまう危険性が高いのです。
3-3.「離婚や別居をちらつかせる」
モラハラ夫は、自分から「出ていけ」「別れてやる」と暴言を吐くことが多いです。しかし、これは「そう言っても、別れることはないだろう。」「こいつなら大丈夫」という甘えからの発言であって、本当に別れたいということではありません。
なので、実際に離婚とか別居になった場合は、混乱する場合が多く、手を返したように優しくなったりすり寄ってくる場合も多いのです。それは、自分に自信がないから、モラハラ対象がないと自分が不安定になってしまうからに他なりません。
ただ、それに応じることは「やっぱり俺のもの。俺がいないとこいつは生きていけないだろう」という意識を増大させることになります。そして、一瞬優しくなるかもしれませんが、その後は以前のようなモラハラが続くことになるのです。
それは、いわゆる「共依存」という不健全な関係を深めてしまうことになります。
相手の自分への気持ちを試すために、その場しのぎの行動を取るのは逆効果と言えます。
4.モラハラ夫を改善するファーストステップはあなたから
では、モラハラしてくる夫との関係を改善するにはどうしたらいいのでしょうか。
意外に思われるかもしれませんが、それはあなた自身が自分らしさや自分の意見を取り戻すことが鍵になるとサイト監修者の石原さんは言います。
「モラハラを受けている人の多くは、『自分が辛い』ということさえ、相手に言えません。
自分が本当はどうしたいのか、どうなりたいのかということはすっかり考えることができなくなっている、『操り人形のような状態』になっていることも多いのです。
モラハラをされているうちに麻痺してしまうんですね。そこに気づいてもらうことからまずはじめてもらっています」(当サイト監修者:石原さん*)
4-1.「私はいや」を伝えて、あなたをとりもどす
おそらく、どんな夫婦も、かつては「なんでも言い合える」対等で幸せな関係だったことでしょう。
モラハラ関係は、「片方の意見だけが通って、もう片方は自分の気持ちや意志を伝えられずにただ従う」というフラットではない関係です。そういう意味では、モラハラ夫はしばらくの間、あなたのその思いや意志を知らずにいたということになります。
石原さんは、夫婦の関係性を改善してモラハラ関係を解消するには、まず、自分を見つめることからだと語ります。
「まずは、あなたはどうしたかったのか、どんな夫婦でいたいのか、でも今はどんな気持ちを味わっているのか、それについてどう思うのかをしっかり洗い出してほしいのです。」(石原さん)
そして、はじめて「こういうことは辛いからやめて」「こうしてほしい」「こういうことが嬉しい」ということが出てくるはずです。
「まずはあなたが自分の気持ちにしっかり向き合って自分を取り戻したい、いい夫婦関係をこれから再構築したいと強く思うことが必要なのです。」(石原さん)
4-2.伝え続けるのに勇気がいる人へ
そしてようやく、自分の気持ちや考えを相手に伝えるというところに立つわけですが、
「そうは言っても、相手に何からどう伝えていけばいいのかわからない、自分の気持ちを伝えるのがこわい、本当に気持ちを伝えて受け入れてもらえるのだろうか……という不安がある人は多いです。
ただ、関係を変えていきたいなら、繰り返し伝えることが必要です。なので、具体的にどういう行動を取っていったらいいのか、についても相談を受けることが多いですね。
苦しい状況から早く抜け出したいのはわかりますが、焦らずじっくり取り組んでもらっています」(石原さん)
しばらくほとんど自分の意見や気持ちを伝えることをしてこなかったのですから、最初は自分の気持ちや意見を伝えるのに勇気がいるのは当然のことです。なかなか最初は1人でそれを続けていくのは大変ですよね。
自分1人で抱え込まず、伴走してもらえる専門家とともに根本から改善を目指していくことをおすすめします。
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