目次
1.まずは「夫婦で話し合い」というけれど…話せないレス夫婦の実情
「夫とは、何でも話せる仲良し夫婦です」
「困ったことがあると一緒に考えてくれて、結構優しい夫です」
「もう、お互い遠慮とかない関係ですね。空気みたいな」
そういう仲の良い関係を築かれているご夫婦でも、実は避けている話題があることが多いです。それは
「私たち、『レス』だよね?」
ということ。
実は、日本夫婦のうちいわゆる「セックスレス」といえる夫婦は2組に1組。しかも増加傾向にあります。(一般社団法人日本家族計画協会の2020年の調査による)
「ずっと私は悩んできたのですが、妻の側からこんなことを口にするなんてという抵抗があって、言い出せないまま、時間が経ってしまって……」
「勇気を出して、私からそれとなく話を振ってたものの、夫は完全にスルー! もう一度その話をするのは気乗りがしなくてそのままです」
「一度大げんかになって、それ以来、うちの夫婦のタブーです。話し合っても解決する気がしなくてあきらめています」
なかなかデリケートな問題なだけに、話し合うきっかけや切り出し方はどうすればいいのか、そして本当に話し合いで解決できるのか、悩んでいたり、あきらめている人が多いようです。
でも辛い状況は続きますよね。もし、それが話し合いで解決するのなら……!
ここでは話し合いでセックスレスが解消できる可能性や、その具体的な方法についてお伝えしていきます。
2.カウンセラーもオススメする、話し合いでレス解消の効果
ことさら、セックスレスについて話し合うことはムダ、という人もいますが、本当のところはどうなのでしょうか。
「それは話し合いの方法が間違っているからではないでしょうか? いきなりタイミングも考えずに『セックスレスを解消して欲しい』と訴えることが話し合いと思っていては、うまくいかないことが多いですね。」
多くのセックスレス状態に悩む夫婦を解消に導いてきたカウンセラーで、このサイト「レスペディア」の監修もされている、石原沙知さん(セクシャル・パートナーシップ・カウンセリング 代表)に聞いてみるとそういう答えが返ってきました。
「実は、セックスレス状態を解消することが目的ですが、夫婦でセックスレスについて話し合うこと自体が、とても大切で、夫婦にとってメリットがあることなのです。」
その具体的なメリットとポイントについてまとめてみました。
2‐1.意外な相手の思い、悩み、状況を知ることができる
話し合いというと「話すことができればそれで解決するの?」と思われるかもしれませんが、そういうことではありません。
夫婦の話し合いで重要なのは「結論を出すこと」ではなくて、「お互いの気持ちを確認すること」です。そうしてはじめて、解決のスタートラインに立つことができます。
同じ家で生活を続けてきたものの、実は夫が何を考えているのか? 妻が何を心配しているのか? 夫が本当は何を望んでいるのか? 妻が言えずに我慢していることは何か?……
そんなことが実はお互いに推測でしか考えていなかったり、気づきもしなかったりすることはよくあることなのです。
元々、男女で考え方は違いますし、個々人によっても、その後経験した生活や仕事の変化で変わってきていることもあるかもしれません。
「どうせ」「きっと」「多分」というメガネを捨てて、お互いに話をしてみる・聞いてみることが大事です。口に出して言わなければ気持ちに気づいてもらえることもないでしょう。
お互いに話してみたら、意外な発見があったという人は実は多いです。
「夫がそんなに仕事のことで悩んでいたなんて、意外でした。それはそれでストレスだったんですね。疲れてるから、という言葉の意味がわかった気がします」
「妻が、レスだったことにそこまで思いつめていたとは知らなかったです。申し訳ない気持ちになりました」
ここで大切なことは、お互いに決めつけない、否定しないことです。相手の状態や意思を認める認めないは別として、知ろう、言葉にしてもらおうということです。
これをするだけで、相手のことがわからない、わかってもらえないという状態からは抜け出せるでしょう。
2‐2.自分の思いを聞いてもらえて不安が和らぐ
また、自分の希望が叶えられるかどうかは別にして、自分の気持ちや状態を伝えてみましょう。伝えられたことで、自分の不安は大きく和らぎます。
ここで大事なのが、
「私は〜という気持ち」「自分は〜が辛い・寂しい」「私は〜できたら嬉しい」
「私は〜が大切だと思う」「私は〜で困っている」
など、あくまで「私が」思い・感じていることを伝えることです。
ひょっとしたら、その結果「気持ちはわかるけれど、やっぱり疲れていて無理」と拒否される場合もあるかもしれません。でも言えた、伝えられたということに意味があるのです。
「自分が思いを伝えられたこと、夫が聞いてくれたことで、なんだかホッとして、少し落ち着きました。これでレス状態が具体的に解決する、というわけではないんですけどね」
そんな感想を持つ人も多いです。
特に、女性には思いの丈を口に出すだけで満足できるケースは多いようです。ただ話を聞いてほしい、自分の気持ちを受け止めてもらいたい、という心理は大きいですよね。
2-3.夫婦で一緒に取り組む時間を持てる
夫婦として過ごす時間が長いほど、それぞれ手分けしてやることが増えていくもの。
その時に、1つ1つ話し合って納得していればいいのですが、そうもいきませんよね。気がつけばお互いが抱えたことをこなして精一杯で日々は過ぎていってしまいがちです。
ましてや、2人の共通のことをじっくりなんてことは、付き合い始めの恋人時代や結婚準備以来、実はなかったりするかもしれませんね。
ここで話し合って、一緒に何かを解決して行こうという機会は、新鮮な体験になるでしょう。長い目で見てもあらためて、今後夫婦としてお互い協力してやっていく上での協働作業になるでしょうから。
3.レスについての話し合い…うまくいかなかった原因はこれ?
「勇気を出して話したけれど、話し合いにならなかった」「ケンカになってしまった」あるいは、そういう話を耳にして「話をしようと思っていたけれど、かえって気まずくなりそうでこわくなって切り出せない」そういう人は少なくないでしょう。
よくある失敗ケースや、その理由をひも解いてみます。
3‐1.寝る前の急な切り出し。その時の夫の心理は……
「私の誕生日ということもあり、週末久しぶりに家族で出かけて外食して楽しい思いをして家に帰ってきました。子どもたちも珍しくすっと寝てくれたので、久しぶりにあるかも?と期待してたのですが、夫が『今日は疲れた。早く寝るわ』。 思わず『え?どうして?誕生日だよ。ないの?』と呼び止めて話をしようとしました。けれども夫は『ん?なんで?だってもうそういうの、今日は無理でしょ』。と取り合ってくれませんでした。」
さて、このケースですが、週末や早く帰ってきた日の夜、ずっと悩んだりモヤモヤしている妻の側からしたら、今が話をするチャンス!と話をしたくなるかもしれません。しかしそれはタイミング的に実はまずいことが多いのです。
多くの男性は仕事で疲れて帰ってきて「もうやっと寝れる。今日もようやく一日終わりだ」
と思ったときに、「してほしい」と言われるとその体力が残っていないので無理ですし、絶望的な気分になるものです。
さらに「なんでしてくれないの?」といった要求をされると本当にストレスになるといいます。さらにこれが繰り返されると、プレッシャーになって話し合いを避けることも起きてきます。
夜に突然というのは、チャンスどころか、実は相手が話を聞いてくれないタイミングの方が多いと思ったほうが良さそうです。
3‐2.「私は被害者」の攻撃トークしてませんか?
つい、レス状態だと、セックスをしたい側は「応じてくれない」、あまりしたくない側は「強要されている」と相手に対して被害者意識を持ってしまいがちです。そうなってしまうと相手を加害者として見てしまい、傷つけ合うやり取りになってしまいます。
また、男性も女性も、相手に対して愛を表現する方法は人それぞれです。自分の思うような表現方法で愛情は表現するもの、それが得られないことに対して「それはおかしい」「なんでそうなの」と苛立ちをぶつけるのも、相手にとっては心を閉ざす原因になります。
レスに悩んでいる中でなかなか難しいかもしれませんが、落ち着いて、相手には事情がある、自分とは違う感じ方をしてるのかも、とまずは話を聞くことが大切なのです。
3‐3.NGワードで夫は離れていく
感情が高ぶってつい言い過ぎてしまう、というのは夫婦の間だからこそよくあることかもしれません。ただ、やはり、相手を傷つけてしまい話し合いができなくなってしまっては元も子もありませんよね。
「『EDなんじゃない?病院行ったら?』と、ストレートに言ったのが、夫のプライドをへし折ってしまったようです。『自信ないからしたくない』と心を閉ざされてしまいました」
「『愛されてる気がしない』『レスなんて夫婦でいる意味ないよね』とか私が夫に不満をぶつける形になり、すっかり『その話はゴメン』と避けられるようになってしまいました。……甘えたい・スキンシップがほしいという気持ちを素直にいえばよかったんでしょうね」
「『月に1回は』という私の希望を夫が受け入れてくれたのですが、すっかりその約束を守ってくれず、つい夫を責めてしまいました。その時は「ちゃんと守る」と言ってくれたのですがやはりそのあとも守ってくれなくて、不満が溜まってます。夫に対して冷たくなってるのかも。夫の言動もなんとなくギクシャクしてる気がします」
自分の寂しさやモヤモヤから、つい相手に行動を要求してしまったり、それができないと「なんで?」と責めてしまったり、相手のプライドを傷つけてしまったり……それではその時点でせっかくの話し合いは中断してしまうことになります。
それでは、本当に夫婦がお互い満たされる幸せな状態は程遠くなってしまいます。それはぜひ避けたいですね。
4.話し合う前からするべき、心得ておくべきこと
では、スムーズに話し合いを進めていって、レス状態を改善するにはどうしたらいいのでしょうか。
いきなり話し合いができてしまう夫婦もあるとは思いますが、実はお互いに「相手をわかっているつもり」「理解してもらえている・察してもらえているだろう」と、コミュニケーションを雑にしてしまって、結果うまく話し合いにならないことは多いのです。
ここでは丁寧にステップを踏んでいるか、その留意すべきポイントをまとめてみました。
4-1.コミュニケーションの量と質を意識しよう
レス状態に加えて、普段の会話やコミュニケーションはどうなっているでしょうか。
もし、あまり会話のない状態なのであれば、そこからいきなりセックスレスについて話し合いというのは、随分ハードルが高くなってしまいます。その場合は、まず2人で過ごす時間を作ることから始めた方が良さそうです。
朝食や夕食を同じテーブルで食べる、たまに2人で散歩する、お互いの趣味に付き合うなど気さくに話せる状態にすることから始めましょう。
もし普段他の話ができる状態なら、話す内容を深めていきましょう。単なる連絡事項のやりとりだけではなくて、相手に興味を持った会話、自分の気持ちを伝える会話を心がけていくのです。
4-2.予告や約束をしておこう
「大切な話をしたいから、今度時間をとってほしいんだけど」
「今度の週末の夜、話したいことがあるんだけど、いいかな」
突然、自分のタイミングで2人のレス状態のことについて話そうと思っても、相手は思ってもみないことかもしれませんし、頭の切り替えだったり心の準備が必要です。また、疲れている・お腹が空いている・仕事などで心の余裕がないなどの時には、いい話し合いにはならないでしょう。
だからこそ、事前に時間をとってほしいと予告して予定を開けてもらいましょう。それまでに考えてくれるかどうかは期待し過ぎないほうがいいですが、少なくとも席にはついてもらえますよね。
4-3.「Iメッセージ」で思いを具体的に伝えよう
「私は、〜なのが好き。〜が幸せ」
「私は、〜がずっと寂しかったの。〜という状態が辛いの」
つい、相手に対して「なんで〜なの?」「どうして〜してくれないの?」と不満をぶつけたり、思うようにしてくれないことに対して理由を聞くつもりで問い詰めてしまいがちですが、それでは自分の気持ちは伝わらないですし、逆効果です。
そうではなくて、あくまで「私は」を使って、自分の気持ちや思いを伝えましょう。これは「Iメッセージ」という、心理学でも有効とされている伝え方で、様々な場面で生かされています。
相手の行動によって「私(I)」がどう感じるのか、を言葉で表現することによって、相手に押し付けられた印象を与えずに、伝えたいことを受け入れやすくするテクニックの1つなのです。
やってみると、ちょっと恥ずかしい人もいるかもしれませんが、その方が、相手を責めずにストレートに伝わるのでぜひやってみてください。
4-4.2人にとって、ちょうどいい形を探そう
話し合いができたら、スムーズにすぐ自分の思う通りの状態が実現するのか、それは夫婦の状況により様々です。
「恥ずかしくて、自分の気持ちをストレートに伝えるのをためらっていたんですが……話をしてみたら、実は夫が気を使っていたようで、私から誘ってくれるのを待ってたみたいでした! 勇気を出して話してみてよかったです」
「話しているうちに、自分は月に1回はしたい、というよりも毎日くっついて寝られることが幸せなんだなと気づいて、それを伝えたら、夫もそれならいいね、となりました。結局それでレス解消にもなりました」
「夫が予想以上にストレスに晒されてるんだな、私たちのために頑張ってくれてるんだなということがわかって、優しくできるようになった気がします。レス解消になったかというと、ちょっと先にはなりそうですが、夫も考えてはくれてるので、そのうち、ですかね」
お互いの嗜好や体調、ライフステージや家族状況……そもそも、レスの状態や原因も複雑でデリケートです。レスの解消も、最初から諦めず、実は夫婦の話し合いからできることはあるかもしれません。
5.まとめ
ここまで、専門カウンセラーのアドバイスを受け、様々な角度から夫婦の話し合いでレス状態の解消する方法を紹介してきました。
この記事をヒントに少しでも苦しいレス状態の解消に役立てていただければ幸いです。
ただ、本当に話し合いが難しいケースや、どうしても話し合うことが心理的にできないという方も少なくないでしょう。上にも書きましたが、本当に夫婦の状況は様々だからです。
また、ある程度互いの気持ちを落ちつけて長い目でレス解消に当たらなければ、こじらせてしまうことも往々にしてあります。
不安が大きい場合、少しでも早く解決の糸口を見つけたいときは、専門カウンセラーに一度ご相談されることをおすすめします。現状の問題点をきちんと整理するだけでもその大きな第一歩になります。
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