レスで離婚を考えているあなたへの処方箋。レス離婚の実際

1.セックスレス時代の離婚事情

はたから見ても仲良し、ラブラブ・あつあつなのは新婚時代だけ。

二人で抱き合って眠るなんて、今はあまり考えられない……。

 

ひょっとしたら、多くの日本の夫婦はそうなのかもしれません。世界的に見ても日本の夫婦のセックスレス率が高いことは、データでもはっきり現れています。

 

ここでいうセックスレスとは「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意したセックスあるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上ないこと」( 日本性科学会の定義)をさします。

 

その割合は51.9%。日本人夫婦の約2組に1組以上がセックスレス状態ということになります。

 

夫婦間で、それについて話し合ったり解決できればいいのですが、ネット上には、セックスレスで苦しんでいる、相手に理解してもらえない、周りには相談できずに抱え込んでいるという人の声があふれています。

 

実際、セックスレス夫婦は不仲になりがちというデータもあります。

アンファー株式会社が11月22日の「いい夫婦の日」にちなんで、30~59歳の既婚男女1,000人にアンケートした結果によると、円満だと感じている夫婦のなかで、セックスレス夫婦は52.8%なのに比べて、不仲だと意識している夫婦の場合セックスレスなのは85.8%という結果が出ました。

 

「セックスレスで離婚を考えている」という切羽詰まった声が出てくるのも、当然のことかもしれませんね。

 

この記事では、セックスレスで離婚はできるのか?、そして実際離婚した場合どういうことが考えられるのかをお伝えしていきます。

 

ご存知のように離婚するとなると、かなりのエネルギーが必要ですし、相当の痛みも伴います。実際に離婚に踏み切る前に、ぜひ参考にしていただければと思います。

 

2.セックスレスで離婚はできる? 慰謝料は?

セックスレスであることは、離婚の理由になるのでしょうか? 実はセックスレスを理由とした離婚は法律上可能ですし、実際に離婚したケースもたくさんあります。

 

ただ、「お互いに」セックスを望んでいない、あるいはどちらか一方が病気などでセックスが困難な場合は別です。あくまでも、セックスが支障なく可能な相手に対して「誘っても拒否されている」状況の場合が対象になるのです。

 

ちなみに、法律的な離婚理由は以下の5つです。(法定離婚事由:民法第770条より)

 

1.配偶者に不貞な行為があったとき

2.配偶者から悪意で遺棄されたとき

3.配偶者の生死が3年以上明らかではないとき

4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

 

セックスレスで離婚できる場合は、セックスレスの状況が「5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」になっているという解釈です。

 

2‐1.セックスレスは大きな離婚理由の1つ

実際、セックスレスで離婚のケースは実は少なくありません。離婚の理由のランキングを見てみましょう。

男性側の理由の6位、女性側の理由でも9位といずれもトップ10に入っています。

  男性 女性
1位 性格が合わない 性格が合わない
2位 精神的に虐待する 生活費を渡さない
3位 その他 精神的に虐待する
4位 異性関係 暴力を振るう
5位 家族親族と折り合いが悪い 異性関係
6位 性的不調和 その他
7位 浪費する 浪費する
8位 同居に応じない 家庭を捨てて省みない
9位 暴力を振るう 性的不調和
10位 家庭を捨てて省みない 家族親族と折り合いが悪い

(平成29年度司法統計のデータより)

 

2-2. セックスレス離婚に必要なことと慰謝料の相場

セックスレスを離婚の理由にするためには、当然ですがセックスレスであることの証明が必要になります。

 

自分で面と向かって相手と話し合って、慰謝料なども含めて合意ができ、スムーズに離婚ができればいいのですが、ことさらセックスレスはデリケートな問題ですし、なかなかすっきりと話合いが進むことは多くありません。

 

その場合、セックスレスで苦痛だったという具体的な事実・証拠が数多く必要になってきます。また、第3者にその話合いをしてもらうケース、調停や裁判ともなれば、なおさらです。

 

セックスレスであることの証明とは、たとえば、実際に拒絶されたことがわかる文字や音声の記録です。

 

メールなどで、「今夜はセックスしよう」と送ったのに対して、「疲れているので無理です」などと返信されているような内容や「もう半年以上、セックスしていないね」などと期間が分かるような内容です。

 

また、実際に時間のすれ違いを証明できるような、夫婦の生活時間が分かる記録セックスレスによる精神的な苦痛を綴った日記も証拠にできます。

 

このようなセックスレスを証明するための地道な証拠集めがあって、初めて離婚を実現するためのスタートラインに立てるということになります。

 

ところで、離婚が成立した場合の慰謝料が気になりますが、セックスレスの場合、相手に不貞や暴力もあったなど、他の要素がない場合は、実際の慰謝料の金額はそう多くないのが現実です。

 

セックスレスが原因でうつ病になった場合など、精神的損害が大きいと認められる場合には、100万円くらいになる場合もありますが、多くは10万円から数十万円程度と考えておいたほうがいいでしょう。

 

意外と少ないことに驚かれた人も多いかもしれませんね。

 

3.セックスレス離婚を考えた人とその後、体験者が語る実情

では、そのようなプロセスを経て、離婚に踏み切った人たち、あるいは逆に離婚を思いとどまった夫婦の体験をご紹介します。

 

3‐1.レスで離婚、再婚した人の明暗

前のパートナーとは、セックスレスから、不仲になり、最後は喧嘩別れに近い形で離婚してしまいました。現在は、3年ほど前に再婚したパートナーと暮らしています。しかし、最近今のパートナーともセックスレスになってしまいました。

私の場合は、特段子どもがどうしても欲しいという気持ちはありませんし、今のパートナーとの生活が幸せです。なので、前回のように関係を壊すのは嫌だなと思っていて、「レスでもいいから夫婦仲を優先しよう。」と現状を受け入れています。 (40代)

 

前の夫は、学生時代から同棲もしていて、その頃からセックスに関してはもともと淡白なのは気になっていました。でも結婚したら、子どものこともあるし、なんとかなるかなと思っていたのですが、甘かったです。結局、私はどうしても子どもが欲しかったので、思い切って決心して、離婚しました。

幸い、再婚した夫の間に子宝も恵まれました。育児とか家事とかで、いろいろありますが……幸せです。                          (30代女性)

 

 

3-2.レスで離婚して失ったもの、得たもの

セックスレスから離婚しましたが、離婚してから1人で生きていくのは本当に大変です。

実家があったり、もともと正社員でそれなりのお給料の人ならなんとかなるのかもしれませんが、自分は派遣社員だったので結構きついです。なかなか転職先も見つかりません。

再婚もできたらと考えますが、若いときより出会いも少ないし、相手もなかなか見つからないですね。

正直、あの時、もっと話し合えばよかったなと後悔しています。ぶっちゃけ、2人の関係を修復できるのであれば修復したほうがラクです。

話し合ってもむりなようでしたらそれは離婚したほうが、いいのかもしれませんが。

                                (30代女性)

 

レスが原因で離婚した相手とは、近所に住んでいて、子育てを助け合っています。

一緒だったときは共働きということもあって、「夫としてどうなの?」とか「家事が不公平だよね」とか「女としてみてくれないの?」とか不満だらけだったんですが、元々嫌いじゃない人なので、離婚してかえって、期待しなくなったのがいいのかも。

今は子育てをシェアしてくれる1人の友達になってます。助かってます。

                                 (40代女性)

 

3-3.レス離婚を思いとどまった夫婦の軌跡

セックスレスであることや、それがきっかけで夫とギクシャクしていた時期がありました。その当時は、とにかく苦しくて、離婚した方が楽なのではと本気で思っていました

ただ、夫のことを好きなことは変わりないですし、できるものなら関係を修復したいという気持ちもありました。でも自分でこれ以上どうしたらいいのかわからないし、修復できる自信もない、頼れるところもなくて……思い切ってカウンセリングを受けてみました。

カウンセリングを受けたのは私だけですが、今は、私も夫も穏やかに一緒にいることができるようになりました。一緒に居ない時にも夫はLINEで私を労ってくれるようになって、お互いに支え合っていると実感できています。毎日夫の反応を見るのも楽しいし、私はこういう安心感がほしかったんだなぁって思います。

あの時、離婚しなくてよかったです。あの時は苦しかったけど今とてもうまくいっているのであの頃を振り返ることはほとんどありません。         (40代 女性)

 

4.セックスレスから離婚に踏み切る前に考えること

様々な夫婦のケースを見てきましたが、必ずしも離婚したから問題が100%解決するというわけではない、むしろ離婚するにも思いとどまるにも、努力や失うものに対しての覚悟は必要のようですね。

 

4-1.セックスレス だけで離婚になるケースは実は少ない

さらにいうと、セックスレスが離婚理由になるとお話ししましたが、実はセックスレスそのもので離婚になるケースは実は少ないのです。離婚に至るケースは多くは以下のようなものが多いとされています。

 

・セックスレス+浮気などの異性関係

・セックスレス+浪費・生活費を入れないなどの経済的問題

・セックスレス+モラハラなど精神的虐待

・セックスレス+家庭を顧みない

・セックスレス+親族との関係がよくない

 

深刻な場合は、問題解決のために専門家のカウンセリングを受けて問題を整理したり、実際に手を借りることも必要になってくるでしょう。

 

4-2.レス離婚で後悔しないためにすべきこと、心得ておくべきこと

このサイトの監修をされ、また夫婦の関係修復やセックスレス解消カウンセリングを数多く行ってきた石原沙知さんによると、離婚をしたいと考えていながら、迷っている理由の多くは以下のようなケースが多いそうです。

 

1位「やはり夫が好きだから、もう一度愛してもらいたい」

2位「今まで夫婦で頑張って夫に尽くしてきたのに、ここで別れるのはもったいない」

3位「浮気されたのが悔しい。ここで自分が引きたくはない」

 

石原さんはこのようなアドバイスもされています。

 

悩んだ末、離婚を考えていながらも『本当にいいのだろうか?』と迷っている時点では、

自分の中だけで解決方法を探るのはとても困難なことです。

 

多くの方の場合、この迷いがある時点で「離婚を踏みとどまる理由」があります。

カウンセリングの中では、それが何かをひもといて、ご自身が納得される状態に向けて行動できるようサポートをしています。」

 

もし、自分が離婚を考えているとしたら、そして実際にはまだ離婚していないのだとしたら、……大きな決断をする前に、そんな観点で、一度自分を見つめてみることも必要かもしれませんね。

 

5.まとめ

セックスレスは十分な離婚理由になります。ただ、離婚は人生を変える小さくない決断であることもぜひ知っておいてほしいですね。

 

セックレスが苦しくてその状態から逃れたいので、離婚というリセットの手段を選ぼうとする人も少なくないでしょう。

 

しかしそれ以外の結婚生活の問題、レス以外に自分と相手が改善できる部分はないかを検討してみる余地はあるように思います。実は、自分以上に相手も苦しく思っていた、なんとかしたいという気持ちが芽生えた、ということも少なくありません。

 

そこからお互いの関係が修復され、レスの苦しさを解消する糸口が見つかる場合も多いのです。